『はじめての催眠術』という本を読みました。
めちゃくちゃ面白い本だったので書評を書いてみます。
上手くいけばなんと、
実際に催眠状態を体験することまでできてしまいます。(私はできました。)
実は医療にも応用されている催眠術
催眠はインチキ・怪しい・うさんくさいイメージとセットになりがちですが、実は科学的に観測されてる、実在する現象なんです。
医学・心理学などでも研究されていて、実際、精神疾患の治療として催眠療法というものもあったりします。
まぁ今では催眠療法が行われることも少なくなってきていますが、まだ医師国家試験の問題選択肢には現役で出現しています。
少なくとも、催眠現象というものは実在するんです。インチキばっかりではありません。
(なにせ私は実際に体験してしまったのですから、、、)
また、「優れた催眠術師が好き放題相手を操るもの」みたいな印象もありますが、それも間違い。
- 催眠とは、「知覚や感覚、感情に関して、何か変化が起こるという期待があった時に、実際にその変化が実現する現象」のこと
- 催眠という現象は、催眠をかける側の能力ではなく、催眠にかかる側の能力に依存する
というのが現代的な催眠の捉え方らしいです。
まず大前提として期待する心が必要で、その先に進むには催眠に入る才能が必要なんですね。
催眠術では、本人が期待することしか起こりません。
また、しっかり期待していても、催眠状態にどれだけ深く入れるかどうかは人によって違います。
このあたりに催眠術の限界があるようです。
催眠を体験できる才能〜「手が勝手に動く」から「自分の名前を忘れる」まで〜
「催眠という現象は、催眠をかける側の能力ではなく、催眠にかかる側の能力に依存する」
とのことでしたが、催眠にも難易度があるんです。
一番簡単なものが運動暗示という種類の催眠。
禁止暗示がそれに続いて、
最難関が感覚・記憶暗示。
という感じ。
9割ほどの人は、正しく催眠状態に入れば、
- 手が勝手に動く
- 体が勝手に倒れる
などの体の動きに関する現象を体験することができるそうです。
これが運動暗示です。
禁止暗示になると少し難易度があがって、体験できる人の割合は3〜5割程度まで下がります。
これは「〜ができなくなる」というタイプの催眠で、
- 手が固まる
- 腕が曲がらない
- 椅子から立ち上がれない
などがあります。
私はなんとか、禁止暗示のうち一番簡単な「手が固まる」現象を体験することができました。
そして最後が感覚・記憶暗示。
- 握ったものを手放せないほど好きになる
- 水がジュースになる
- 自分の名前を忘れる
ここまでくるともはや魔法の域です、、、
さすがに信じられない気もしてきますが、1〜3割の人は実際に体験できるらしいです。
不思議ですね、、一度体験してみたいものです。
催眠術には信頼関係が最も重要
更に重要なこととして、催眠は充分な信頼関係がないと起こりません。
催眠を行なう上で最も重要なのはこの信頼関係を構築することなんです。
信頼関係と言っても、単に仲良くなればいいという話ではありません。
確かに「この人の催眠なら安心して体験できる」という気持ちを持つことは重要ですが、
まずは「催眠そのものへの信頼」が大前提になります。
催眠というものが本当に実在していて、また決して危険なもの・自由が効かなくなるものではないということを信用していないと、催眠に入ることはできません。
「催眠なんてありえない」という気持ちがあっては、何か変化が起こることを期待することもできません。
疑っている人はむしろ、うさんくさい・催眠なんて存在しないよ、という「期待」をしてしまっているわけです。
これでは起こるものも起こりません。
さらに、「もしかしたら体の自由を奪われて好き勝手に操られてしまうかも、、」という不安があってもNGです。
催眠術師の腕の見せ所は、この信頼関係の構築にあるそうです。
催眠に関する誤解を解き、世界を拡げてくれる良書
以上が本書で紹介されている催眠のリアルです。だいぶ印象が変わったでしょう?
本書の前半では、以上のように催眠に対する誤解を解きつつ、催眠現象にまつわる簡単な歴史や催眠研究の現在など、学術的な背景が紹介されています。
そして後半には具体的な催眠のスクリプトの紹介がされているという構成になっているのですが、、
この後半がおまちかねの、実際に催眠を体験できる部分です!
「読み上げるだけで催眠にかかるスクリプト」というものが紹介されているんです。
これは暗示に加えて、人体の仕組みを利用した「トリック」を併用することで、ほぼ全員が確実に催眠状態に入れるという代物。
私もいくつか簡単なものを自分でやってみたところ、本当に暗示にかかってしまいました。
特にすごかったのが、先程も紹介した「握った手が開かなくなる」禁止暗示。
筋肉の生理学的な性質をフックとして利用することでカタレプシーという現象を引き起こしているらしいのですが、本当に手が開かなくなるんです。
この体験ができただけでも、この本を買った価値があったなと思えます。
興味のあるかたは是非試してみてください!
おわりに
ただし、人によって入りやすい催眠・暗示は違うし、またどの程度深く入れるのかも違うので注意。
また、前述のように信頼関係というのも重要です。
この本では科学的背景も紹介されていたことから、私はこの本を充分に信頼できていたようです。
その結果、催眠という現象が本当に起こりうるものだということを信じ、期待することができたんだと思います。
おそらく本書全体が、「催眠に対する信頼感」を醸成する催眠術となっているんでしょう。
ぜひとも本書を買ってから催眠術を体験していただきたいところですが…
「我こそは催眠術にかかる才能がある」というかたは、以下のスクリプトを試して、手が固まってしまう催眠術を体験してみてください。自己暗示をする際は、一通り読み終えて、ある程度流れを暗記した上で、自分に言い聞かせるように「」の中を読み上げると良いと思います。
(『はじめての催眠術』講談社現代新書 p115〜p118より引用)
手が固まる暗示
手を握って意識を向けるうちに、固まってしまい開くことができなくなります。禁止暗示の基本となる、カタレプシー現象の解説です。
- 被験者に、利き手を握って目の前にかかげ、好きな爪を選んで見つめてもらいます。
「全ての爪が見えるように手を握ってください。どの爪を見つめながら催眠を体験したいですか?」と問いかけ、答えを聞いた上で「結構です。いま決めた爪をじーっと見つめていてください。もし意識がそれてしまっても、また元の場所に視線を戻してもらえれば大丈夫です。」と伝えます。 - 手に握る力を入れてもらいます。「手にぐっと力を込めてください。指先を手のひらにめり込ませるような感覚です。指先と手のひらの隙間がなくなっていきます。接着剤でくっついてしまったようなイメージです。」
- 手に意識を集中してもらいます。「爪を見つめながらグーッと握っていると指先の感覚が変化してくるのがわかります。指先がジワーッとしてきたり、暖かくなってきたり、あるいは疲れてきたりするかも知れません。どんな感覚かはひとそれぞれですが、普段と違う感覚の変化を楽しんでください。あなたはその感覚に意識を集中することができます。」
- 数十秒程度力を入れ続けてもらったら「だんだん指が疲れてきましたね。少しだけ力を抜いていただいて構いません。そうすると、先程とまた感覚が変わってきます。血が指先に流れてきます。それと同時に、指先や指の付け根がこわばるような感じがしてきます。その感覚に意識を向けていると、どんどんあなたの手は硬く、石のように硬くなっていきます」と、手の硬直の暗示を与えていきます。」
- 「私が一度手を叩いたら、その手は開きません。」と伝えた上で、手を叩きます。間髪を入れず「もう手は開きません!開こうとすればするほどどんどん硬くなっていきます」と追い込み暗示をかけます。
- 「一度手を叩いたら自由に手は動かせます」と伝えて、手を叩き、暗示を解きます。
以上が手が固まる暗示のスクリプトです。どうでしょうか、うまく催眠状態に入ることはできましたか?
もしできたなら、かなり催眠の才能があるはずです!ぜひこの本を手にとって他の催眠も体験してみてください。
おしまい
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