【周術期リスク】リウマチとは違う ― 視神経脊髄炎(NMOSD)の考え方【整形外科手術】

医療

リウマチ・膠原病領域では、周術期に免疫抑制薬や生物学的製剤を一時的に休薬することは、
比較的一般的な対応として行われています。

そのため、
視神経脊髄炎(NMOSD)も同じ感覚で考えてしまいがちです。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

NMOSDは、
疾患の臨床像も、再燃時のアウトカムも、
リウマチ性疾患とは本質的に異なります

  • 再燃=不可逆的な視力障害・脊髄障害につながり得る
  • 「少し様子を見る」「一時的に休薬する」という判断が、
    致命的な結果につながる可能性がある

同じ「免疫抑制薬」という言葉を使っていても、
判断の重みが全く異なる疾患だという前提を、
まず整形外科医側が共有しておく必要があります。

この違いを理解しているかどうかで、
周術期管理だけでなく、
患者へのインフォームド・コンセントの内容と深さは大きく変わってきます。


NMOSD患者の人工関節手術で、事前に考えておくべきこと

NMOSD患者の人工関節手術では、
手術適応を検討する段階から、
以下の点を意識しておく必要があります。

① 感染リスクの問題

NMOSDでは、
生物学的製剤や免疫抑制薬を継続したまま周術期を迎えることが少なくありません。

その結果、

  • 一般集団より感染リスクが高くなる可能性
  • 感染を契機に、
    ステロイド調整や免疫制御が破綻するリスク

を常に念頭に置く必要があります。


② 再発時の二次的リスク(脱臼・機能低下)

NMOSDで再発が起こった場合、

  • 筋力低下
  • 体幹・姿勢制御障害
  • 感覚障害

を背景に、
人工関節脱臼のリスクが一般より高くなる可能性があります。

これは、

  • 手術自体が成功していても
  • 術後経過が順調であっても

再発というイベント一つで、人工関節の予後が大きく左右され得る
ということを意味します。


それでも手術を選択すべき場面はある

ここまで述べると、
「ではNMOSD患者には人工関節手術をすべきではないのか」
と感じるかもしれません。

もちろん、そうではありません。

  • 疼痛コントロールが困難
  • ADL低下が著しい
  • 保存療法では限界がある

といった理由から、
それでも手術を選択すべき場面は確実に存在します。

重要なのは、

  • これらのリスクを事前に整理したうえで
  • 患者にきちんと説明し、
  • 納得してもらったうえで手術に臨むこと

です。


ICと医療者側の準備が、結果を左右する

NMOSD患者の人工関節手術では、

  • 「手術ができるかどうか」以上に
  • 「何を理解した上で手術に臨むか」

が重要になります。

特に、

  • 感染リスク
  • 再発時の機能低下・脱臼リスク
  • 周術期の免疫抑制薬管理

について、
患者と医療者が同じ前提を共有しているかどうかは、
術後のトラブル対応や満足度に直結します。

そして何より、

これらを患者に説明する前に、
医療者自身がきちんと理解し、
対策を考え抜いていること

が最も重要です。

NMOSD患者の周術期管理は、
「手術をする・しない」という二択ではなく、
理解と準備の質が問われる領域だと思います。

おしまい。

以下の記事では、
感染と再燃のリスクのバランスをどうマネジメントするか、という観点で、
もう一歩踏み込んで考えています。

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