肝となる業務でスキルを磨けばコスパ良く楽しく働くことができる

雑記

ストレスなく楽しく働くためには、肝となる業務を抑えることが重要です。

「フィードバックがしっかり受けられる業務か」
「他に応用が効くスキルを身につけられる業務か」
「周囲からの評価にインパクトがある業務か」

の3つの条件を総合的に判断し、最もコストパフォーマンスの良い業務が、最初に極めるべき肝となる業務です。
「もうこの仕事を始めて長いけど、あまり成長している感じもないし、働きやすくなっている感じもしない」というような人は、この肝となる業務への集中ができていない印象があります。

今回は、楽しく有意義に仕事をしてきた医師である私が、どのように考えて今の仕事環境を手に入れたのか、について書いていこうと思います。

医師としての私の体験

私が初期研修医だった頃の経験を思い出すと、救急外来での業務が本当に肝だったなと感じます。
初期研修医の仕事は救急外来業務と病棟業務に分かれるのですが、救急外来業務を極めるのが、圧倒的にコストパフォーマンスが良いと考えたのです。

病棟での業務は、採血や点滴指示のコピー、定期内服の処方など、どうしても単調で繰り返しの作業が多くありました。

こういった単調作業の場合、効率化にはシステム的な問題が立ちはだかることが多く、労働集約的にならざるを得ないというコスパの悪さがあります。1日が24時間と決まっている以上、これを人より大量にこなして一目置かれる、ということにもなりづらいです。
単調作業なので技術も身につかず、前述の3条件には合致しません。

病棟業務の専門性と慣習性

では病棟業務において単純作業でないものはどうかというと、かなり専門的なもの、もしくは慣習的なものの両極端に分かれますが、これらもコスパの悪いものでした。

ひとつは、心臓疾患の入院患者さんが不整脈を起こしたときの対応など、非常に専門的な知識と判断力が必要なケースです。こういった場合、基本的には上司の意見を仰ぐことになり、自分の裁量はほとんどなく、フィードバックの機会も限定的です。経験が浅い自分にとっては、この専門性の高さは大きなハードルとなっていました。

このケースは、前述の3条件のうち、3つめの「周囲からの評価にインパクトがある業務」には該当しますが、そもそも自分の裁量がないのでフィードバックを受ける機会がなく、さらに応用もできません。

もうひとつは、入院中の患者さんが下痢や便秘、不眠といった比較的軽い症状を示すケースです。こちらは、医学的根拠に加えて、病棟看護師や自分が使い慣れていて、副作用のコントロールにも自信のある薬剤を選ぶという、慣習的で実践的な対応が求められます。しかし、こうした場合もフィードバックが散発的で、改善の効果がはっきりと見えにくいという課題がありました。
どちらの場合も、現場での経験が必要なため、得たスキルが他の場面で幅広く応用できるとは限りません。これも前述の3条件のいずれも満たしません。

病棟業務は、何のスキルも身につかないか、習得に時間も労力もかかる上で応用の効かないスキルが必要か、という点でコスパの悪いものでした。

肝となる業務:救急外来業務

コスパの悪い病棟業務に対して、救急外来は「フィードバックがしっかり得られる業務」で自分の能力を磨ける、と言う点で圧倒的に優れていました。
救急外来では、患者さんの病歴や身体所見をもとに、どんな病気が疑われるのかを即座に判断し、必要な検査や治療を決めるという、純粋な医学的判断が求められます。さらに、現場での決断に対して上司や同僚から直接フィードバックが返ってくるため、PDCAサイクルを高回転で回すことができました。

その結果、救急外来というチャレンジングな環境で鍛えたスキルは、他の場面でも応用可能な「汎用的な医学的判断力」として対応力を向上させました。
つまり、「他に応用が効くスキルを身につけられる業務」としても非常に優れていました。

さらに、自分で言うのもなんですが、複数の同僚や先輩、少なくとも1人の上司からは「頼りになる存在」として評価してもらい、救急外来看護師からの「使えるヤツ」という認識も確実に高まりました。
救急外来業務は「周囲からの評価にインパクトがある業務」としても非常に重要でした。

ここまでくれば、上司からの信頼もあり、より専門的な判断においてもある程度の裁量をもらったりして、次のステップである病棟業務のより専門性の高い部分まで経験をすることができるようになります。しかも、すでに基礎的な対応力を身につけているので、それを病棟業務においても応用可能となり、コスパの悪かったはずの病棟業務が、コスパの良い業務になっていったのです。

まとめ:肝となる業務を極める意義

このようにして、まず肝となる業務を見抜き、それを核として業務範囲を拡大することで、楽しく有意義に働くことができます。
さらに、こうした成功体験は、自分自身に対する自信となり、ストレスを大幅に軽減してくれたのです。

もちろん、どんな職場にも業務の負荷や人間関係の摩擦といった問題はあります。極端なパワハラや労働基準法違反が横行している職場であれば、どんなに自己研鑽に励んでも限界があるでしょう。しかし、私がいた環境は基本的には整っていて、多少のストレスはあっても、フィードバックを受けながら成長できる職場でした。

この経験から、私が伝えたいのは、
「フィードバックがしっかり受けられる業務か」「他に応用が効くスキルを身につけられる業務か」「周囲からの評価にインパクトがある業務か」という視点が、キャリア形成において非常に重要だということです。
自分の強みを磨くには、まずその強みが正当に評価され、さらなる成長に繋がる環境で働くことが欠かせません。
それらを勘案した上で、もっともコストパフォーマンスが高いと考えられる業務を極めることができれば、自然と自信がつき、結果的に仕事上の不安やストレスも軽減されるのだと思います。

この過程において、「自分に向いているかどうか」というのは最初に考えることではなく、むしろ後から判明してくるのではないか、と思います。多くの場合は、やってみないと向き不向きはわからなかったりしますものね。

この考え方は、どんな職場でも応用できる基本的な理念でしょう。まずは、自分のスキルが高く評価され、フィードバックが得やすい環境を選び、そこで日々のPDCAサイクルを実践すること。
そうすることで、どんな業務にも臨機応変に対応できる力が養われ、より充実したストレスの少ない働き方が実現できるんじゃないかな、と思っています。

おしまい

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